少し気が滅入っているような時も、作り手の全身全霊がこめられたような作品を見ると、勇気付けられる。

ちょうどいい具合に目黒界隈で時間が空いたので、東京都庭園美術館に、『舟越桂・夏の邸宅』を見に行った。
半分位は以前の展覧会で見た、見覚えのあるものだったが、今回の主役となっていたのは新しいスフィンクスのシリーズ。
玄関の左手にひっそりと立つ「戦争をみるスフィンクス」も良かったが、何より圧巻はホール入り口で入場者を待ち構えていた「森に浮くスフィンクス」。
まさに両性具有のたくましいスフィンクスが、3本の枝の上に突き刺さるように乗っかっている。その不思議なアンバランスさは、まさに戦争で傷ついた兵士そのものであった。
別の部屋にあった「戦争をみるスフィンクスU」は、恐ろしい顔をしていた。
長くしっかりした首に、なで肩を通り越したなだらかな肩、そしてふっくらとやや下がり気味の美しい乳房…スフィンクスシリーズの体の美しさにはどれも見とれてしまうが、よく観察すると、オリンピック選手顔負けの筋肉隆々の体つきをしている。
像の後ろに回ると、お尻がこんもりと実に美しい形をしていた。相当鍛えていないと、こういうお尻にはならない。
一番好きだったのは、ポスターにも使われていた「遠い手のスフィンクス」。うっかりすると見過ごしてしまいそうな横手の方の部屋に、一人、鎮座していた。
鉄の金具でつながれた片腕がちょっと痛々しく、ちょん切れた手があらぬ方からその腕に添えられている。
お腹とお尻は、木が削がれていて丸みが無い。
部屋を出る時、鏡に映ったその穏やかな表情をもう一度見てみた。
外に出ると、だいぶ気温が下がり、心地よい夕刻になっている。庭園にはなぜか、くつろぐ人の姿がまったく無かった。