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菩提樹の初花が (リルケ詩、片山利彦訳) 菩提樹の初花が ひっそりと風に散り 私の心におおけなく早くも浮ふ幻 それは樹翳の緑に染んで座っている君の姿 初めての母の仕事にいそしんで みどり児の肌衣縫う君の姿 針の手留めず歌う君のうたは 五月(さつき)の中へひびき入る 花咲け、花咲け、花咲く樹 親しい庭の奥で咲け 花咲け、花咲け、花咲く樹 わたしはここで待っている こえなき夢の充ちるのを 花咲け、花咲け、花咲く樹 夏には実りが豊かだろう 花咲け、花咲け、花咲く樹 私は着ものを縫っている 太陽(ひ)の輝きも縫いこんで 花咲け、花咲け、花咲く樹 実りのときはやがて来る 花咲け、花咲け、花咲く樹 わたしの大事なあこがれの 意味(こころ)を告げよ、花咲く樹 君は歌う、歌いながら その歌こそは五月そのもの その樹の花は咲くだろう どの樹々よりも際立って 君の縫うその着ものは 晴れ晴れとかがやいて 若い母に成る君の仕事は 樹の翳の住んだ緑に清まって 小さな肌着を作るだろう 30数年一人で続けてきた下着専門店を、最近閉店したSさん。 店を始める時の最初のイメージにあったというリルケの詩。それを書き写したメモをそっと私に渡してくれた。 ネットで調べたら、舞踏家・大野一雄がかつてこの詩を演目に踊っている。 |



