
映画『靖国』を観た。
いろいろ物議をかもしているだけに、ちょっと緊張もしたが、映画館も客席も実に静かな雰囲気だった。
映画割引の日だったこともあって、いつもより客数は多いだろうが、こぢんまりとした映画館はほぼ満席。男女の比率でいうと男性がやや多いが、男女とも年代がうまくばらけている感じで、男性は学生か50代以上(平日昼間だから中間が抜けているのは当たり前)、女性は各年代が平均的にいる。通常の映画のようなおばさまグループは見当たらず、ほとんどが一人で来ている。
さて、内容は…。ドキュメンタリー映画の王道を行っていると思った。
中国人の監督にとっては民族的に複雑な思いもあるだろうに、実に客観的に淡々と描いている。
それにしても、靖国神社を一つの基点にしながら、そこに登場する人々が多種多様であることに驚いた。イデオロギーもスタンスの置き方も実にさまざまだし、日本人だけの問題でもない。
首相や政治家が参拝することを反対とか賛成とかいう問題の奥には、実に複雑な問題がからみあっている。
はたからは奇妙で不気味に見える例も少なくないのだが、当人にとっては、それが生きていることの「よりどころ」であるのだ。それを失っては、それこそアイデンティティクライシスに陥るだろう。
戦争で親や親族を亡くしている人たちにとって、それは格別の思いであると思うし、それに対して他人が非難することはおろか、あれこれ言える筋合いのものではない。
生きるための「よりどころ」を持つことは、誰にも必要だ。
何かへの強い愛情とか信念を持つのはいいが、それがあまりに独りよがりで排他的になり、客観性を見失った時に、他者との軋轢、醜い争いを生む。
こういうことは私たちの身近にもたくさん転がっている。