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ウエルエイジングのお手本
「ウエルエイジング」のお手本のような友人が京都にいる。
先週末、出張の折に久しぶりに会って、食事を楽しんできた。

某企業の早期退職制度を利用して退職してから、もう3年は経つだろうか。
仕事の話が無くなった分、財テクの話が増えたといった変化はあるが、Tさんはいつ会っても若々しく、とても還暦を過ぎた女性には見えない。
ファンデーションはつけていないというお肌はいつもぴかぴか。細く華奢な体は、趣味の水泳で鍛えられている。
そういう外見だけでなく、Tさんはもともと年齢を感じさせない人だった。
企業の中にいながら、社内に対しても社外に対しても、ヘンな上下関係を振りかざすことはなく、彼女ほど対等に一個の人間として周りの人々と向き合えるという人は、そういない。それがTさんにとっては至極自然だったのである。
最近は、成人した甥や姪たちと仲良くしている様子で、ほほえましい。

お嫁さんにしたい女性の筆頭にあげられるようなタイプであるのにかかわらず、ずっと独身。親から譲り受けた町屋に、一人暮らしをしている。
お嬢様育ちで、ほとんど料理もしたことがなかったらしく、家事をこなすのも新鮮のよう。「1日3食の食事作りをしていると、すぐ1日が経ってしまうのよ」と、日々の生活を楽しんでいる様子が伝わってくる。

とにかく、何事にもポジティブなところがすばらしい。
以前、私がその日にあったいいことをメモするように日記をつけていたのも、「1日にうれしいことを5つ、見つけるようにしているのよ」というTさんの話がきっかけだった。
お母様と妹さんを次々に亡くした直後も、すべてを受け入れている姿が印象的だった。

水泳にまつわることは、飾らない言葉に哲学さえ感じられる。
「全身の力を抜くとね、どこまでも泳げるのよ」は、まさに名言であった。
先日も、「私、どんどん泳ぎが上手になって、早く泳げるようになって、どうしようかと思うのよ」と笑っていた。

日頃の鬱憤やグチをいっぱいにためて、吐き出したくて仕方がない私も、Tさんの前ではそういう会話はどこかに飛んでいってしまうのである。
 2008/10/06 22:15  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

『PARIS』という名の映画
Bunkamuraル・シネマで正月ロードショーとなる映画の試写会に行ってきた。
フランス映画を多く公開してきた同館の20周年記念らしく、題名も『PARIS』。
監督は、『猫が行方不明』『スパニッシュ・アパートメント』(両作品ともまだ見ていない)のセドリック・クラビッシュ。
俳優は、ジュリエット・ビノシュ他、フランス映画でおなじみの顔ぶれが多数出演している。そしてなじみ深いパリの景色の日常性、リアリティのある話の筋に、すんなり溶け込める映画だった。

心臓病を告知されたダンサーを主人公にしながらも、複数の人の生活,、世界(ユニバース)が交差する。いかにもパリにいそうな人ばかり。
大学教授からホームレスまで、職業も階級もさまざま人が登場するのだが、いずれも「アムール」が軸になっているのが、やっぱりフランスらしい。時代が変わっても、フランス映画の本質は変わらない。いくつになっても「アムール」を追求するパッションを持つ人々、恋愛至上主義が貫けるフランスという国はうらやましくもある。
40歳過ぎのシングルマザーを演じる主人公の姉役、ジュリエット・ビノシュという女優はやっぱりすごい。生活に疲れ果てた表情に、髪の毛がいくら「爆発」していても、これだけ魅力的でいられる女優というのはそういない。

ラストシーンは、成功確率半分以下の心臓移植手術を受けに、パリの町並みを見ながら、タクシーで病院へ向かう主人公。
そして、パリの空を見上げながら、その表情は笑顔に変わっている。
画面にはこう流れる。
「これがパリ。誰もが不満だらけで、文句を言うのが好き。皆、幸運に気づいていない。歩いて、恋して、口論して、遅刻して、なんという幸せ。気軽にパリで生きられるなんて。」

今日のような秋晴れの東京の街を歩いていると、私も幸せな気分になった。生きているっていいな、と。

 2008/10/02 20:45  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

遺伝子は受け継がれる
今日はいい日だった。

私が10年以上前に評伝を書いた某クリエイターについて、A新聞の文化部記者、Kさんから話が聞きたいと、昨日電話があり、早速会ってきたのだ。
もう忘れられた存在かと思っていたが、その遺伝子は脈々と若い世代に受け継がれていたのだ。
これこそライター冥利である。

何の気負いもなく、2時間、思いのたけを話すことができた。
この人になら、私が知っていることは全部伝えたい、そう思える人だった。
こういう万に一つの出会いのために、私は仕事をしているように思う。
 2008/08/21 21:24  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

こうして今週も…
日曜日。セラピストのMさんがこう言った。
「女の人は年をとるに連れて、(いろいろ余計なものが取れて)神に近づくような気がする」
何があっても動じない女に、私もなれるか。

月曜日。連載している月刊誌の取材で、某企業へ。ちょっと疲れた。
その後、シアターイメージフォーラムでやっているフェリーニの『8 1/2(はっかにぶんのいち)』を。45年前のイタリア映画(イタリア語はかわいい)。堂々のハチャメチャ138分。昔も今も、みんな悩んでいる。マストロヤンニもアヌーク・エーメも魅力いっぱい。
夜は学校時代の同級生Iさんと、一度行きたかった池袋の「海幸の街」へ。回転寿司屋なのに、金沢の魚と地酒が堪能できて、大満足。

今日、火曜日。原稿を1本終えた後、音楽家のKさんが送ってくれたCDを聞きながら、このブログを書いている。フランスのクラシック音楽専門ラジオ局の視聴者投票で上位の30曲を編集したこのCDは、ものすごく中身が濃い。
外はまだカンカン照りだが、もう少ししたらヨガをしに行こう。

明日、水曜日。仕事の後、最近アパレル企業を退社したKさんの、お疲れ様会。50歳前後の女が3人集まる。

美しいもの、おいしいもの、素敵な人たちに囲まれている、幸せな私。
こうして今週も過ぎていく。
 2008/07/29 17:05  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

母からの便り
母から2日続けてハガキが来た。いつものように細かい字でぎっしり、宛名側の下にも続いている。
その日の天候から始まり、その日何をしていたか、そして私の健康を案ずる言葉で終わるのはいつものスタイルだが、この2日はどちらも、天才ピアニスト、グレン・グールドのことが書いてある。
私は見なかったが、今週の午前中、4日連続で、グールドを紹介する番組がNHKで放映されたようだ。
以前から筆まめな母だが、いくらなんでも2日続けてというのは珍しい。相当、グールドの存在が強烈に映ったらしい。

第一信の方では、グールドがコンサート活動を止めて、レコード録音によって自由を得たこと。エキセントリックな部分とロマンチックな部分を持っていること。ロマンチックとはないものに対するあこがれ、在るものに対しての批判。狂気じみた人とも見られるが、勇気のある誠実な人。本人はあくまで自分のめざす自由に向かって、人に何と言われようとも変わった行動を続けたのでしょうが、幸せで安らかにこの世を去ったのでしょうか、とある。
次の日の番組で、50歳を迎えて間もなく他界したことが分かったようで、今日の二信目にはそのことが書いてあった。
人生の総決算として、バッハのゴールドベルグ変奏曲を、若い時と全く違う旋律で完成させたこと。理想の生き方を求め、自分と向き合うことに徹した人で、夏目漱石の『草枕』を愛読していたこと。生涯独身で、1982年に逝ったことが書いてある。

早速、実家の母に電話。今度帰省する時に、私の手元にあるグールドのCD(たまたま1956年録音と1981年録音の両方を持っていた)を持っていくことを約束した。

話は変わるが、私は親元を離れて、もう26年が経つ。親と一緒に暮らしていた時間よりもずっと長くなってしまった。母の手紙も26年分あることになる。
整理術のエキスパートである某女史は、手紙や写真は、本当に大切なものや好きなものを数点だけとっておいて、あとは捨てなさいというのが持論のようだが、私はとてもそういうふうに思い切れない。
仕事関係のDMだって、その人の顔をもう忘れてしまったものでも、そこに私に対する手書きのひと言があれば、取っておくのが私の流儀。後で読み返すことはあまりないかもしれないが、私のことを思って書いてくれた手紙を、私はやっぱり捨てられないのだ。
 2008/07/12 21:35  この記事のURL  /  コメント(1)  / トラックバック(0)

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