踊り場に入ったユニクロ
 ユニクロの8月国内既存店売上は前年比9.3%減と低迷し、3〜8月計も同6.4%減に終わった。新聞報道はその要因を長雨と猛暑などとやんわり逃げているが、本当の要因はチノブームを見誤ってのジーンズ偏重などの度重なるマーケティングミス、脱中国シフトによる品質神話の陰りである事は言うまでもない。
 秋物の立ち上げを見てもジーンズ偏重は変わらないし品質感を疑う商品も消えていないから、この春夏の不振要因をまったく訂正できておらず、図体のでかい垂直統合型SPAゆえの開発期間の長さが変化対応力を損なっているのは明らかだ。ユニクロの開発射程(企画決定から店頭まで今や1年近くを要する)を考えれば、この春夏の反省が商品展開に反映されるのは再来年の春夏シーズンにずれ込みかねない。
 不振を挽回すべくこの秋冬はヒートテックを四割増の7000万枚売る計画だが、イオンやヨーカ堂なども類似商品を大量投入する中、目論み通りに売上を伸ばせるとは限らない。むしろ、チノパンツやマウンテンパーカ、ムートンブーツなど、新たなパワーアイテムを加えるべきであろう。特定パワーアイテムに過度に依存するままでは、この秋冬も不振が続くのではないか。
 ユニクロ不振の最大要因は開発射程の長期化による過度なプロダクトアウト体質がもたらす市場対応力の低下、コストが急上昇する中国からベトナムやバングラデシュへシフトする過渡期がもたらす品質神話の陰り、の二点に他ならない。とすれば不振の要因は本質的なものであり、その克服には2〜3年を要すると見るべきであろう。ユニクロは長い踊り場に入ったのではないか。
 2010/09/03 08:55  この記事のURL  /  コメント(0)


トップバリュコレクションは・・・
 昨夕、スケジュールの空きを見計らって幕張まで車を飛ばしました。前々から気になっていた「トップバリュコレクション」を検分すべく、幕張のイオン(旧イオンマルシェ)まで出かけたのです。1F駐車場に滑り込んでカルフール時代に設計されたオートスロープを3Fまで登ると、今春開発された生活雑貨業態の「R.O.U」(小奇麗ですがまったくのブランド編集型でバリュー訴求力は皆無)と向かい合って200坪級の「トップバリュコレクション」が広がっていました。
 第一印象は「つまんない!」に尽きましたネ。平場を囲ったようなキャラのない売場に平場と変わらない平板な商品が平場同様に凡庸な陳列で並ぶだけの魅力のないもので、30分ほど見ていたのですが、夕刻のピークにも拘らずお客さんはほとんど入って来ませんでした。素人さんでも新鮮な魅力があるかどうか本能的に嗅ぎ分けるのでしょう。それぐらい、一見して何の魅力も新味もない売場でした。
 価格は「ユニクロ」水準ですが品質は量販平場と大差なく、レディスでは「ユニクロ型垂直統合SPA」という建前とは裏腹なODM臭い商品(ポイントの「インメルカート」みたいだった)も目立っていました。ベーシック狙いなのかトレンド狙いなのかアダルト狙いなのかユース狙いなのか狙いの定まらない構成で、キャラもコンセプトもまったく見えず、これでは旧「トップバリュ」の方が遥かにましなのではと思いました。アバクロの元シニア・ディレクターを起用したという触れ込みでしたが、そんな臭いのする商品はメンズのアウトドアルックだけ。レディスは完璧に量販平場商品で、ミッシーぽいナチュラルカジュアルと思えばOLぽい通勤着があったりギャルOL向けの下着やレギンスがあったりと、もうハチャメチャでした。ソックスやバッグなどの雑貨は企画仕入れが見え見えでしたよ!
 イオンさんは三菱商事と組んで「ユニクロ型垂直統合SPA」を目指すと意気込んでおられますが、立ち上がった「トップバリュコレクション」は品質もMDもVMDも店舗環境も販売手法も量販平場の域を出ないもので、大山鳴動して・・・・と言うしかない代物でした。これで「ユニクロ型」と言ってはユニクロ様に失礼ではありませんか!
 上っ面だけの戦略が先行してリアルマインドを欠く開発は決して成果を得られないでしょう。いったい誰がこのプロジェクトに命を懸け魂を吹き込んでいるの?そこがホントの問題だと思うのですが・・・・・
 2010/09/02 09:54  この記事のURL  /  コメント(0)


夏の終わりの明暗
 8月30日、ABCマートは発行済株式の24.3%を所有するユナイテッドアローズの全株式を売却すると発表しました。ユナイテッドアローズが31日から実行する自社株のTOBに応じ、約107億円で売却するそうです。TOB価格は一株1000円でABCマートの取得価格は約670円ですから、すったもんだの挙げ句とは言え、ABCマートは35億円ほどの売却益を得ることになります。ユナイテッドアローズにとっては望外のハッピーエンドでしたが、これも今春からの本格的な業績回復による株価の上昇と資金のゆとりがあったからこそで、頑張った甲斐があったネと祝福してあげましょう。きっと社内は万歳の大合唱か大序曲1812騒ぎだったに違いありません。重松さん、岩城さん、ユナイテッドアローズの社員の方々、ホントに良かったネ!!!
 同じ夏の終わりに、買収劇の果てにアンハッピーな結末を迎えた会社があります。それはファーストリテイリングに買収され、玩具のように弄くり回された果てにボロ布のように捨てられたキャビンに他なりません。8月31日、キャビンはリンク・セオリー・ジャパンに吸収され39年の歴史に幕を閉じました(東京カジュアルウェアの創業から数えれば50年になるのでは)。昨日のテンカイジャパン栗田亮さんのブログ『さよならキャビン』には元キャビン社員達の忸怩たる想いが滲んでいましたよ。忙しいのに『Cabin grafity70’S〜80’S』というスライドショーに、つい見入ってしまいました。あまりに楽しかった平明オーナー時代に比べれば、07年にファーストリテイリングに買収されてからの流転のドラマは涙なしには語れないでしょう。キャビンの元社員達、そして平明元オーナーはどんな気持ちでこの日を迎えたのでしょうか。そして柳井さんはこの結末の責任をどう感じているのでしょうか。
 2010/09/01 09:00  この記事のURL  /  コメント(0)


瓢箪から駒
 昨日の新聞報道によれば、ファーストリテイリングは「ジーユー」の最大店舗を10月中旬、大阪の心斎橋に開設するそうです。1650平米(500坪)という規模は500平米級標準店の三倍以上ですから、柳井さんもいよいよ「ジーユー」を「ユニクロ」に並ぶ第二の基幹業態に育てる腹を固めたのでしょう。
 高品質神話のプロダクトアウト型SPAゆえ開発期間が長くマーケットインの機動性を欠く「ユニクロ」はトレードオフな低価格トレンド商品は不得意ですから(下手に手を出せば品質神話が揺らいでしまう)、品質の縛りが緩く開発期間も短い「ジーユー」でカバーしようとするのは当然の帰結です。拙著「ユニクロ症候群 退化する消費文明」の中でも『ジーユーはファストリのOLD NAVYになる』『500坪級スーパーストアに化けたら凄い成長エンジンになる』などと指摘しましたが、柳井さんも当然、同じ可能性に気づいていたのでしょう。最近の「ユニクロ」の伸び率鈍化(3〜5月の既存店売上は92.1、6〜7月は97.3)を見て、第二の成長エンジンと期待するようになったと思われます。
 拙著では『5兆円構想を実現するには良品計画を買収すべき』と力説しましたが、これも柳井さんはとっくにお気づきになっていたに違いありません。となれば、「ジーユー」の成長エンジン化同様、瓢箪から駒になって『ファストリが良品計画を買収』なんて新聞に載るのも時間の問題かも知れませんネ。拙著では他にも幾つか柳井さんに提案していますから、次々と現実すると面白くなりますよ。まだ拙著をお読みでない方は是非、そのへんをチェックしてみて下さい。
 2010/08/31 09:28  この記事のURL  /  コメント(0)


誰でもSPA時代への決別は・・・・
 90年代以降、衣料生産の海外(ほとんどが中国)移転が急進して生産現場が遠く離れていくにつれ、多くのブランドが生産管理やソーシングを商社やOEM業者に依存するようになり、マーケットインへのQR重視とともに仕様開発や素資材調達まで依存するOEMが蔓延。アウトソーシングが定着するとともに社内の企画・開発組織も細り、今や企画までアウトソーシングする丸投げODMが主流となった感さえある。それと平行するようにテキスタイルコンバーターから企画会社まで様々なニーズに応えるOEM/ODM業者が雨後の筍のように氾濫し、小売店でも手軽にオリジナル商品が開発できるようになって『誰でもSPA時代』が到来し十余年が過ぎた。
 しかるに、OEM/ODMによる安易なものづくりが広がるにつれ同質化も極まって行き、値崩れが値崩れを呼ぶデフレスパイラルを招いた事も否めない。売れ筋追いは値崩れが避けられず、市場感覚のLAカジュアルなど結局、誰も儲からないという喜劇となってしまった。そんな悪循環を断ち切るにはOEM/ODMを脱し、手間暇かけたものづくりに回帰するしかないだろう。『誰でもSPA時代』への決別が今、業界に問われているのではないか。
 とは言え、生産現場が遠く海外に移転して久しい今日では、それは同時に企画現場の海外移転に繋がる。事実、今年になって上海や広州に転勤する企画・開発スタッフが急増しているという。生産に続いて企画まで空洞化する事になれば日本は本当にロストワールドになりかねないが、文明の生産地移転は歴史の必然であり、選択の余地はないだろう。我ら業界人は何時、転勤辞令が出ても対応できるよう、中国語や英語を学んでおくしかない。恐ろしい時代になったものだ・・・・・・
 2010/08/30 09:06  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール

小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。

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