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チーム“アバウト”
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チーム“アバウト”の面々と食事をご一緒する機会がありました。
当日は田園都市線の池尻大橋で合流してという段取りだったのですが、お一方は一駅隣りの三軒茶屋駅まで行ってしまい折り返し池尻大橋まで戻られたとか。急行(池尻大橋には止まらない)に乗ってしまったの?と訊くと「いえいえ、各停でした」。さらにお連れの方は、二子玉川まで行って引き返したとのこと。(二子玉川は、三軒茶屋からさらに四駅離れていま す)
山手線の東側のオフィスにお勤めでいらっしゃいますので、チーム“アバウト”の面々からすると渋谷から一駅に過ぎない池尻大橋ですが、はるか西の彼方の「とりあえず、あの辺!!」ということで電車に乗られるのだとか。
新人の頃、報告書の表現で大きな雷を落とされました。大手GMSがディスカウント型新業態を出店した際に、取引口座はないにもかかわらず会社のブランド商品がコーナーになって売られている現場を調査したときのことです。“店内には、どのフロアも客がウヨウヨしており…”や“驚くほど大量の商品が…”などの表現に、「まったくビジネスレポートになっとらん」とつき返されたのです。ビジネスの中でもとりわけ法務の分野では抒情詩は求められておらず叙事詩的表現が必要なのですが、当時の上司には私もチーム“アバウト”に映ったのでしょう。
我々の業界には“バックリ”とか“バクっと”などのアバウトな状態を形容する用語があります。また、自嘲気味に「私はアナログ人間なので…」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、実は“アパレルを科学する”ことにアナログアプローチは不可欠なのです。
アナログとは、連続しているある量を他の連続する量で表現することを意味します。他方、デジタルとは、状態を表す量を数値化することですが、数値化の過程で連続する量を離散的な数値として表現せざるを得ません。すなわちアナログ処理では元の情報の全量が保存される可能性がある一方で、デジタル処理では元の情報の一部を捨て去っている可能性があるのです。
たとえば、アナログ時計を見て12時ジャストだと認識したその人は、11時59分頃から12時01分頃までの時間の全量を捉えていますが、デジタル時計で12:00'00という表示を見た瞬間には百分の一秒以下の時間を捨て去っているとともに、視覚情報が脳に伝達されて認識するまでに時間を要していますので、ほんの暫く前の過去の時間を現在時刻として認識していることになります。(神経を伝わる情報の速度は、毎秒50cmから120mの間です)
売上や利益はSKU単位のデジタル情報の積み上げの結果です。デジタルであるがゆえに、捨て去られた様々な情報がこぼれており、本当の事実とは少しずれた情報を認識している可能性があります。そこで、アナログ処理が必要となるのです。デジタル情報をアナログ処理して意味情報としてストックし、当該シーズンの修正MDや次シーズンの初期MDを通じてデジタルな品番やSKUに落としていく。マーチャンダイジングとはまさにそういうプロセスを踏むことに他なりません。
財務的に数字が読めるということと、前述のプロセスを踏むことができることとは若干アプローチやノウハウが異なります。私がMDのサポートをさせていただく際にはMDの方がアナログ処理して意味情報を引き出しやすいように様々な工夫を凝らします。
“辛子明太子”を“サチコのメンタイコ”と注文する○○さん、朝礼で、“世間ではバルブもはじけたので、気を引き締めて基本に戻るように”と朝礼で訓示される△△さん、焼酎のお湯割りを“7:4で割って”と注文してマスターを悩ませる□□さん。業界の愛すべきチーム“アバウト”の皆さん、安心してください。アパレルを科学することのプロセスは、デジタル処理→アナログ処理→デジタル処理の繰り返しです。アナログ処理能力がない人にいいMDはできません。でも、デジタル処理もできないと商品は上がってきません。
最後に、“アナログ”のことを“アナグロ”とおっしゃり続けていた××さん。当時、間違いを指摘する勇気が出せなかった私をお許し下さい。 |
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ルネッサンスの予感
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アパレルを科学する議論は久々になりますね。一般に科学に必要な要件は、「再現性」と「反証可能性」と申し上げましたが、アパレルを科学するにあたり、私は「再現性・継続性・継承性」と「検証可能性」と定義しています。
「再現性」とは文字通り、成功パターンやモデルは時と場所を変えてもいつでも再現することができるし、逆に失敗パターンは二度と繰り返さなくて済むということを担保するものです。
「継続性」とは、単なる思いつきで議論したり分析したり、やってみたり、やらなかったりではなく、いったん始めたらずっと継続してやり続けることで、あたかも大地に地層が堆積して いくかのように土台が積み上がっていき、強固な基盤ができていくという意味を表しています。
「継承性」とは、ブランドや事業、部門や世代を超えてノウハウが受け継がれて横にも縦にも展開できることを意味しています。
すっかりビジネス用語として定着した、“仮説〜検証のサイクル”という概念ですが、学問の世界においては常に批判的に検討を加えるという意味で反証と言いますが、ビジネスの世界では批判的にも受容的にも検討を重ねていくという意味で検証と表現したほうがフィットするように思います。
愚直に仮説〜検証のサイクルを回し続けるという体質は、前の会社で徹底的に教わりました。今にして思えば、最初はかなりぎこちないものでしたが、現在では完全に遺伝子として体に染み付いた昔の仲間達を見ていると、そのような結果を生み出すに至ったトップの強い思いと、とことんまでやり通すパワーには頭が下がります。
ところで、最後に本稿を起こすきっかけになった本日のエピソードをご紹介いたします。生産管理の分野でITソリューションを提供しておられる冨田女史と、彼女を介して出会った池田女史(ファッションギルドLLPの主宰者)を交えた三人でのお話です。
アパレルを科学するという視点で「継承性」を詳細に定義すると、“とかく暗黙知として限られた人間に土着しがちな業務のプロセスや、シーズンごとの結果から得られた次シーズン以降に引き継ぐべき知見を目に見える形にして誰でもわかるように引き継いでいく”と言うことができます。
池田さん、冨田さんの共通の志の出発点は、ファッション業界のモノづくりにおいて、我々が忘れかけている“より着やすい、より面白い、より進化した、よりこだわった洋服を作り続けようよ”という「DNA」をアパレル各社と携わる皆さん方に復興してもらいたいという強い想いであます。そしてその帰結点は、果たしてそういう時代が再来したときには、それに十分に応えうる技術と知識を伴った人材が川上の各企業において継承されていないという齟齬が発生するのは火を見るよりも明らかなので、当該LLPを立ち上げ、我々でできることを模索していこうというものでした。
もちろん、趣旨への全面的賛同とできうる限りのご協力を約してその場を後にしたのですが、専門分野は異なるものの「継承性」という共通のファンクションでアパレル業界に貢献できればと私自身の想いを改めて強くした次第です。
どうもアパレル業界にルネッサンスの嵐が吹き荒れる予感が…私だけでしょうか?
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科学って何?
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科学に必要な要件は次の二つです。
1)再現性があること
2)反証可能性が示されていること
1)は、同じ条件下では同じ現象が相違なく繰り返されるという意味で、2)は、“それはおかしいのでは?”、と突っ込みを入れたい人に対して、反対証明ができるプロセスや条件が示されている必要があるという意味です。
時々、そうではない現象や結果が起こるという状況や、つべこべ言わずに結論はこれという態度は科学とは認められないということです。
アパレル業界の業務の場面においては、前者の状況は日常茶飯事ですし、後者のような態度をとる上長者の存在は枚挙に暇がありません。
であれば、アパレルを取り巻く業務、とりわけMDを科学にしてやろうと強く思ったのでした。
ちょうどそのころ京都で勢いのあったアパレル企業が全国紙の全面広告でまさに、“アパレルを科学する”と謳い、“われわれはアメリカンフットボール型の合理性とチームワークに基づく業務に邁進する”とぶち上げました。
その会社は、残念ながら数年前に自己破産宣告をするにいたりました。掛け声は十二分だったのですが、実際は科学することができなかったのでしょう。
他社が公の場で宣言してしまったので、深く静かにアパレルを科学することへの挑戦を始めたのでした。 |
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アパレルを科学することとの出会い
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アパレル企業でSPA事業の開発と進展を間近で経験させていただいた私は、POSによって蓄積されるデータをどう分析して何に活かすのかを考え始めていました。
神戸大学のMBAの講義では多くの学びがありましたが、もっとも印象に残ったもののひとつが、その後甲南大学に転進された得津一郎先生の統計学でした。
もともと、大学受験直前までは理系だったのに、二次試験(共通一次の最初の年の受験生です)が現国と英語だけなので何とかなりそうという安易な理由で法学部に進学した私なので、得津先生の講義を聞いて、本来の血がメラメラと騒ぎはじめました。
ちょうど、経営学の分野で統計的処理を駆使した論文が流行っていた頃です(学問の世界にも論文や研究の方法論やアプローチにあたかもファッションのように流行り廃りがあるのです)。
得津先生の、何のアンチョコも見ることなく横5メートルはあろうかという黒板に、高性能のタイプライターが等速でひたすら印字していくかのように、見事にびっしりと数式を埋めていかれる光景に鳥肌が立ったのを覚えています。
現在も甲南大学のHP上で、計量経済学は「いいかげん」な学問?という表題で面白いコメントを述べておられる先生ですが、当時もっとも印象に残ったご発言は次のような趣旨のものでした。
そもそも科学たる学問の分野で、経営学が多用するケースの記述は、サンプリングの普遍性の乏しさや、そこから導かれる説明の厳密性の欠如という意味で、まったくもって認めがたいというのが持論でいらっしゃいまいた。
ところが、n=1でも立派な説得力を有する記述もあるものだと得津先生をうならせたのが、MBAの先輩の加茂英司氏(現在は大阪学院大学の先生です)の著作「社会人大学院サクセスガイド」(94/3刊)でした。
“科学って、面白れぇ!!!”その後の私の業務に多大な影響を与えた出発点となりました。
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