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法人格のジレンマ
カテゴリは企業法務としましたが、入口が企業法務で出口がMBAのココロになる議論です。

 法律行為の主体者になるには法人格が必要で、商標などの産業財産権の所有権者になるにも当然、法人格が必要となります。

 日本国憲法の下で、我々日本国籍の自然人は生まれながらにして法律上の人格を有していますが、その権利能力や責任能力については民法、刑法それぞれで20歳とか14歳とかさまざまなボーダーラインが規定されています。

 今となっては、(国によっては未だのところもありますが)当たり前のこの基本的人権も、歴史的に確立されたのはほんのここ数百年のことに過ぎないことを忘れてはなりません。

 さて、個人個人は独立した人格を有する人間が複数集まって組織を構成したときに法律上どのように扱うかが問題になります。そこで法人格という概念が必要となってくるわけです。組織が法人格を有するためには商法や会社法をはじめとするそれぞれの法律の手続にしたがって設立や登記を行うことになります。

 組織としての体はなしているものの、法律上の法人格がない集団のことを“権利能力なき社団”と称します。会社の中にあるサークルや法人登記していない労働組合などがそれにあたります。法人格がないことから、財産権をはじめとする法律行為の主体者にはなれないので、代表者や経理担当者が個人の名義で預金の管理などを行わざるをえません。もし、活動の結果として利益が発生した場合には納税が問題となります。これには様々な問題点や諸説があるのですが、本稿の趣旨とは異なるので割愛いたします。

 会社の法人格は上記のような法律上の裏づけとは別に、その方向性や個性はトップが人間として体現しています。それらを共有するために、ビジョン、ミッションなどが文章として定義することは多くの会社で行われています。

 ところが、非常に初期の濃い人的集合であるはずのベンチャー企業ですらトップと同じ目線で同じ立ち位置に立つことは意外とできていない現実に直面することが多々あります。先日あるベンチャー企業で、創業経営者の一人が社長に対して、社長の考え、意図が理解できない旨の発言をなさる場面に直面して驚かされました。

 社員の心と頭のベクトルの方向あわせをしていかなければならない経営陣ですら社長と一定の距離があるとしたら…。

 若い頃、頭ごなしに上司に叱られたときに、「私は君の人格を否定しているわけではない。君がビジネス上やった行為とその結果に対して怒っているのだ。」と何度となく言い聞かされました。以来、私の個人としての人格とビジネスは別物として扱おうという基本スタンスは身についたつもりでいますが、本当にそれでよかったのでしょうか。

 創業者は、個人としての想いや人格そのものが会社すなわち法人格と一体化しているからこそ創業者であって、そうして初めて会社は成長していくものではないかと。その法人格と心と頭が分離して手足としてだけ動く仲間だったら、その人々がいくら優秀であってもでも会社は成長しませんよね。

 法律的には法人格とそれに携わる人々の人格とは全く別次元のものですが、経営的にはビジョンとかミッションなどのきれいごとだけでは決して表現できない、心根というか魂というか、そういうものの強い結合が必要なのではないでしょうか。心霊主義的に表現すると、「幽体を通じて魂と肉体の強連結を図る」とでも言いましょうか。

 そうすると、バリューブックやクレドなどが、“魂”に相当する部分と“幽体”に相当する部分にきっちり分解されてていて、整合性をもって表現されていないと、肉体には連結しにくいということになりますね。さっそくお手元のそれらを見直してみませんか。

 2008/04/05 12:02  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

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プロフィール

北村 禎宏(きたむら さだひろ)
ファッションビジネスコンサルタント
アパレル企業での実務経験とMBAの経営理論を融合させ、クライアントの問題解決やアドバイザリー機能を提供。
「アナログ」と「デジタル」、「実践」と「理論」のハイブリッド型コンサルティング活動を実践するとともに、教育・研修事業も鋭意展開中。

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