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地場産業から土着産業へ
 今日は、神戸大学経営学部主催のシンポジウムに参加してきました。先生方の変わらない弁舌に触れることはもとより、同窓生や先輩、後輩に会えることも大きな楽しみのひとつで、日曜日が潰れることに何のストレスも感じさせないのが出身学部主催の各種イベントです。

 さて、本日は「企業価値と神戸」“神戸企業の実例に学ぶ”というテーマで、神戸企業の代表として、ロックフィールドの岩田社長、シスメックスの家次社長、フェリシモの矢崎社長をお迎えしての議論が展開されました。

 パネルディスカッションでは、加護野忠男先生がコーディネーターを務められ、上記の経営者諸氏にマーケティングの石井淳蔵先生を加えて、とてもエキサイティングな議論が展開されました。

 その中から本稿では加護野忠男先生の基調講演のエッセンスをご紹介いたします。先生のお話を私が勝手にサマった内容ですので、論文体をご容赦いただきたいことと、文責は全て私に帰することを予めお断りしておきます。

 企業は取引のネットワークに組み込まれて生かされている。取引のネットワークとは人々や企業の協働を支えるルールを意味する。したがって、企業が取り組む問題解決やソリューションは、それらのネットワークを自らつくりかえることと言い換えることもできる。

 そのようなネットワークの要素のひとつに、「地の利」がある。地場産業という呼び方もあるが、今日お集まりの皆さんには、ぜひとも「土着産業」を目指して欲しい。

企業のビジネスシステムは、当該企業が属する地域の慣行や文化によって支えられている側面がある。京都のベンチャー企業や大阪の金型産業、神戸の清酒メーカー、ケーキ屋、菓子屋などはその典型である。地域で起こるイノベーション(ソリューション)も、その地域の文化や歴史と不可分のものがある。

 京都には、よそ者が地元の人と同じことをやっては受け入れられない文化がある。だからこそイノベーションが起こる。オムロンは熊本、村田製作所は福井、京セラは鹿児島からやって来た。それぞれ京都でイノベーティブな分野を開拓した代表企業である。

 片や大阪には、既存の先行地元企業を押しのけてでもという文化がある。して神戸はというと、どちらかというと京都に近い文化がある。たとえば、神戸には多くの有名で美味しいケーキ屋や洋菓子屋が多数あるが、これらは神戸の地の利に育てられた業界ということができる。

 神戸の地の利とは、第一に、舌が肥えるには三代が必要と言われるように、そういう金持ちの顧客に恵まれていること、第二に、職人が育つ環境があることの二点である。神戸の洋菓子職人には、自分が修行した店と同じ商品は絶対に作らない、近くに店を出さないという不文律がある。万一、それを破る人や店が現れたとしても、顧客がそれを淘汰するメカニズムが働く。
       
 もともと神戸は商業から始まった都市である。商業には様々なビジネスシステムのゆりかご機能がある。棲み分け型文化と職人の発掘と育成の文化が神戸ならではのビジネスのゆりかごになっていると言うことができる。

 どこかはわかりませんが、いずれかの地域(地方)で地場産業に貢献することを私のビジネス人生の仕上げにしたいと漠然と思っていた私ですが、土着産業の発掘と育成に寄与するということで、まだまだ悩ましいビジネス人生の仕上げ目標の明確化が一歩前進した一日でした。

 いつものことですが、加護野節からは独特の元気と知識を頂戴することができます。さらに、今日のシンポジウムは神戸大学経営学部を舞台に加護野先生と石井先生が揃い踏む最後の機会でした。石井先生は別の私学に転出されるからです。最後は、キャリア・ミドル・モチベーションの大御所である金井尋宏先生の質問(金井先生の場合は、質問者として質問されるのですが、いつもご自信の持論のお披露目になってしまいます(笑))も加わって、神戸大学経営学部の一時代の黄金トリオの、まさにゴールデンディスカッションで締めくくられました。

 現役時代も、お三方には多くの事を教えられましたが、卒業後もこのような形でさまざまな刺激と知識を与え続けていただける諸先生に感謝の言葉もありません。


 2007/12/02 21:17  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

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北村 禎宏(きたむら さだひろ)
ファッションビジネスコンサルタント
アパレル企業での実務経験とMBAの経営理論を融合させ、クライアントの問題解決やアドバイザリー機能を提供。
「アナログ」と「デジタル」、「実践」と「理論」のハイブリッド型コンサルティング活動を実践するとともに、教育・研修事業も鋭意展開中。

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