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マックスマーラの本社があるレッジオエミリアというイタリアの小さな町を訪ねた。目的はイタリアで一番と評判を得ているATREBALLETOというコンテンポラリーのカンパニーを見に行くことであった。新進気鋭の40代のコリオグラファー、マウロ率いる20人ほどのカンパニーである。マウロはオペラ出身のコリオグラファーだけあって、モーツアルトに始まって、イタリアの民謡まで実に音楽の使い方がうまい。 踊りはネオクラシックをベースにしたモダン。わかりやすく、それでいて激しい。人間のもつ内なる感情をダンサーの筋肉を使って表現する。彼にかかると、ダンサーは筋肉を持った機械になり、本来のココの個性を隠し、季節風のように時にやさしく、時に激しく肉体を使うことを要求される。 団員のレッスン風景をみせてもらった。誰もが、極限のジャンプを楽しみ、筋肉が美となったからだを自在に動かしていた。それはまるで、本番をみているような錯覚に陥るほどでもあった。ダンスによって自分を昇華させていくさまを見ながら、ダンサーという宿命をもったものの生き様をみせてもらった。遊びのなかに真剣さがあり、真剣さの中に遊びがあった。特に男性のダンサーは圧巻である。 日本公演が予定されている。 コンテンポラリーがまだ身近でない日本の観客がマウロの作品をみれば、コンテンポラリーというダンスが何を表現しようとする芸術なのかがわかるだろう。少しずつ、コンテンポラリーの時代がやってきているが、日本はまだ、クラシックダンサーが演目のひとつとしてやっており、どこか、クラシックバレエから抜け出せないでいる。それだけに、日本の観客たちは本当のコンテンポラリーの美しさをしらないともいえる。鋼のような体がかもし出す魂の表現を見たら、きっと、胸の奥で眠っていた感情が目を覚ますだろう。それがコンテンポラリーのエネルギーである。そのエネルギーを感じたら、コンテンポラリーはクセになる。 公演演目であるマウロの「ロミオ&ジュリエット」の制作サポートしているのは、マックスマーラなどを扱っているMarella社。最近はファッションとバレエのコラボが主流になりつつあり、ダンサーがモデルとしてファンションショーで踊るのが流行している。しかし、そこまでのコラボはあっても、今回のようにファッション企業が経済的に作品の制作サポートをすることはまだ少ない。 そのMarella社の社長に会うことが出来た。本社はレッジオエミリアの町の中心から車で15分ほどのところにある。守衛のいる入り口を通ると、葉祥明の絵本に出てくるような並木道を抜けて、玄関に着く。まるで絵本の世界に2階建ての瀟洒な建物が3連。No3に社長のオフィスはあった。ショールームには来春のファッションが世界のバイヤーを待っていた。ファッションという華やかな世界とは正反対の近代的でシンプルなオフィスは、イタリアのデザインを象徴しているかのようである。2年前に越してきたという。社長室に通されると、これもまた、日本の社長室のように置物がおいてあるわけでもなく、家族の写真が一枚飾ってあるシンプルなものであった。大きく開放された窓からは緑がいっぱいの中庭がみえる。 チョコラーニ社長はイタリア映画に出てくる富豪のようなジェントルマンだった。笑顔がまたいい。ミドルエイジにしてこの色気。日本男性にもこの清潔な色気がほしいものだ。話をするとき相手をまっすぐに見つめる大きな目。この目で今までどのくらいの女性をうならせてきたのだろうか。こんな目を持った日本男性が増えれば、ミドルエイジの日本女性ももう少し、女性らしく、美しくなるだろうに。 イタリアの女性がミドルエイジをすぎてもきっぱりと化粧をし、ファッションを決めているのは、この目力のせいだろう。いくつになっても外に出ると発見があるものだなあと思いつつ、オフィスを後にした。玄関まで見送ってくれた女性にいい上司をお持ちですねというと、チョコラーニ社長の元で働けて幸せですという返事が戻ってきた。成長する企業はやはり、トップがいいというのは共通しているようだ。それにしてもいい男であった。 PS.この夏は収穫が多かった。レッジオエミリアという小さな町はそこだけが、昔の時代を守っているようで、ゆったりと澄み切った空気が流れていた。 |






