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トイプードルがやってきた日。
週末に生後2か月のトイプードルが我が家にやってきた。白の男の子。名前はやってくる前から決まっていた。「白米」。そして、まだ決まっていない幻の2匹目の子の名前は「玄米。」犬を飼うことになって、家族でワイワイ話しているうちに何も決まっていないうちから、名前だけが決まった。女の子だったら、つぶあん、こしあん。なんだか、食べ物ばかりの名前が挙がった。


朝早くからわくわくしながら、ブリーダーさんのところへでかけた。着くのが早すぎたらしく、ブリーダーさんはまだ姿がみえない。その間、店内で待たせてもらった。白の小さな塊がこちらを見ている。「この子だ。」生後1か月の時の写真しか知らないはずなのに、なぜか、すぐにわかった。そして、この子も「この家族だ、ぼくの新しい家族は」と思ったのか、大歓迎のジャンプ。あまりにジャンプをするので、「白米」より「ジャンプ」に名前を変えたらいいのではないかと思ったほどだ。動物の間とのコミュニケーションは不思議なほどにうまくいく。動物は相手が動物好きかそうでないか、瞬時にわかるようだ。この点では我が家は「この子」に合格点をもらったようだ。


私たちの家にはプーという名の白のペルシャ猫とハーブという名のゴールデン レトリバーがいた。プーは17歳でこの世を去り、その後ハーブが8歳で逝ってしまった。プーは自宅で介護を受けながら、最期は夫が看取り、お通夜には京都の大学に行っている息子が帰京して送り出すことができた。長寿であっただけに飼い主の私たちに後悔は残らなかった。

一方、ハーブは旅行のために預けていたペットショップに迎えに行ったら、冷たくなっていた。まだ8歳という若さと一昨日まであんなに元気だった姿が重なり、涙が止まらなかった。大きな体を触るとまだ温かい。眠っているだけで、すぐに起きてきそうな感じだった。ゆすったけれど起きない。なにがおこったかわからないまま、泣きながら家まで戻った。「昨夜まで元気だったのですが、今朝、亡くなっていました」という説明が追い打ちをかけた。旅行先から一日早く戻ってきていたので、昨夜迎えに行こうかと思ったのを、「朝シャンプーしてからでいいか」とやめてしまっていたからだ。悔やまれて仕方なかった。

葬儀の日は偶然にも私がザ・ボディショップの社長としての最後の朝礼をする日と重なった。この朝礼が終われば、少しは朝時間ができるようになる。そうなれば、いっぱい朝の散歩に行ってあげようと思っていた。なのに、その約束は守れないままになってしまった。「ごめんね、ハーブ」。後悔の涙がとまらない。忙しい朝、玄関先であきらめ顔に私を送りだしてくれるハーブ。遊んでもらいたくてじゃれてくるのに相手にしてやれなかった時の淋しそうな表情。どの表情も人間のそれに似ていた。「犬はおぼえていないから」と友人が慰めてくれた。しかし、私は覚えている。

生き物を飼えば、必ず死に目にあう。だから悔いのないよう、家族のように一緒に暮らしていくのがいい。しかし、それが十分でなかった場合、心に大きな穴が開く。埋めるのに何年もかかる。ハーブの死後、しばらくは運転をしていると、急に上空にハーブの姿がみえたり、野原を見ると、そこを走っている姿が浮かんだ。そんな日々が続いていただけに次のワンちゃんを飼うのを誰もがためらっていた。そして、数年が過ぎ、やっと次のワンちゃんを家族にする決断ができたのだ。

そこへやってきたのがやんちゃな白米。これからはこの子が家族を笑わせてくれるのだろう。プーとハーブのそれぞれの死は生き物を家族に迎える覚悟を教えてくれた。白米は大丈夫よ。心配しないでね。2匹の写真に手を合わせて、新しい家族を紹介した。


 2008/07/07 22:28  この記事のURL  /  コメント(2)  / トラックバック(0)

子に越されて、うれしや。
正月の3日に家族でテニスにでかけた。久々の家族テニス。その昔は家族でレジャーといえばテニスと決まっていたが、娘の留学や息子の転勤などで、遠のいていた。
品川プリンスのテニスコートを借り、汗を流した。お正月は小さな子ども連れの家族や友人同士のプチテニス大会でにぎわっている。

私はラケットを握るのは2年ぶり。しかし思ったよりラリーが続いてちょっとほっとした。息子はなんだかとてもたくましくなって、娘とラリーをしている。娘は娘らしいしなやかな動きで兄のボールを追っている。「へえ、うまくなったな、ふたりとも。負けちゃうよ」

「ほら、イチ ニ の サンでラケットを振ってね」とボールを投げてやった日はいつのことだったのだろう。心の中ではいつまでも小さい子どもたちだけれど、目の前にいる子どもたちははるかに私を越えてしまっている。

越えるといえば、我が家では私が一番チビ。といっても女性としては165センチもあるのだが、夫は178センチ、息子は187センチ、そして、娘は174センチ。だから、林の中にいるようで、いつも声は上から降ってくる。私はみんなを見上げて話す。

英語もそうだ。何でもわからないと聞きにきていた娘がペーパーバックの分厚い英語本を読んでいる。「全部わかるの?」と私。「うん、わからないところは辞書で調べている」と娘。時々父とは英語で話す。英語も越されちゃったな。外国に一緒に旅すると如実にそのことがわかる。

息子はフィアンセの影響で百人一首を勉強しなおしている。お正月は百人一首のカルタとりをやるというフィアンセの実家に招かれたときに参加できるようにということらしい。私も百人一首は高校生のとき全部暗記したが、大学生になったら全部忘れた。このくらいは言えなくちゃ、日本人なら、と思うけれど、ね。で、ここでも息子に越された。

年を重ねるにつれ、いろいろなことを子どもたちに越されていく。
そんな子どもたちをもったことは、本当は親として、
とてもしあわせなことじゃないかな、と
このごろは思えてきた。




 2007/01/04 21:04  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)


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プロフィール
蟹瀬 令子(かにせ れいこ)
上智大学文学部英文学科後、博報堂に入社し、コピーライターやコピーディレクターとして活躍。
1999年、「ザ・ボディショップ」を日本で展開するイオンフォレストの代表取締役社長に就任。
ケイ・アソシエイツ代表として、外資系企業、および国内企業のブランディング、マーケティングを手がける。2007年スキンケアブランド、LENAJAPONを立ち上げ現在にいたる。

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