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誤算だらけの交渉(4)
ロドリゲスは、当地のインド系にしては珍しいクリスチャンで、
名刺にもカトリック名だけを印刷している。

交渉の席ではマノに調子を狂わされ、感情のコントロールを
失ってしまった。駆け引きを行う当事者としては、命取りのミ
ス。インド系のスパイスに過剰に反応してしまった。

そもそも、こちらには何の落ち度もないわけで、最初から弁護
士さんにお願いし、経過を見守るだけの立場をとることができ
れば、それがベストの選択肢だったと今でも確信している。

ただ個人の限られた資金で、月ごとに上がるわずかな利益を
コツコツと溜め込んでいるような経営状況では、高みをきめこ
むような余裕はなかった。

それに、外国人を相手にどこまで自分の思惑通りに交渉を進
めることができるか、ちょっとした好奇心に駆り立てられていた
のも事実だった。

「同じ客商売をしているものとして、今回の被害が営業に及ぼ
す深刻な影響は十分に理解できる。当レストランも以前、ゴキブ
リが大量発生したことによって駆除と対策で臨時休業に追い込
まれたことがある」とロドリゲス。

「われわれとしても最大限の補償に応じたい。だが、リストに計上
されている賠償請求はあまりにも高額だ。そこで、廃棄して新調し
た備品は新品の価格ではなく、廃棄品の中古価格として算出し、
1日半の営業補償には全額応じる。フロアと壁の修復については、
見積もりを出した業者ではなく、当レストランが指定する業者に任
せるという条件で妥協してもらえないだろうか?」

おだやかな口調に加え、フェアに聞こえる条件提示。マノをスパイ
スに仕立てたロドリゲスが差し出すヨーグルトに当たり、これ以降、
腹部に違和感を覚えたまま日々を過ごすことになる。
 2006/06/29 16:45  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

誤算だらけの交渉(3)
出された飲み物のストローに口をつけるもの、賠償請求
のリストを指で追いかけるもの、腕組みをしたまま思案
にくれるもの。しばしの沈黙が広がる。

一番最初に口を開いたのは、やはりマノだった。

「オレは事件直後に自らサロンに行き、詳細に被害状況
を確認した。このリストに挙がっている備品は確かに水を
かぶったが、水を除去した後、すべてが正常に機能する
ことをチェックしたんだ。フロアも、きちんとモップがけをし
て元の状態にもどったじゃないか!」

備品の機能チェックなんかしていない。フロアの清掃は、
管理ビル職員が善意で床の汚水を取り除いてくれたもの。
マノは清掃の場には立ち会っていないから、おそらく人伝
えに聞いたものと思われる。そもそも木の床だから、水気
を抜いたところで、修復完了とするわけになどいかない。

『チェックなどしてないじゃないか』と言えば、「オマエがい
ないときにやった」と返ってくるのが目に見えているので、
『じゃ何? この正式な話し合いの場に、私がでっちあげの
賠償請求を持参したと言いたいわけですか?』とマノに視
線を向けた。

「そうは言ってない。事実と違う箇所があると指摘したまで」

『事実と違うということは、つまり、オレが嘘ついてるってこと
と同じ意味じゃないか!』

そうやって立ち上がると、口ひげをたくわえたマノも立ち上が
って応戦。ここで、ゼネラルマネジャーのロドリゲスが落ち着
いた口調で、「マノ、それは交渉の物言いではない」とボソリ。

次に、こちらを向きなおして「失礼な対応でした」と一見紳士的
に振舞った。一見と書いたのは、このロドリゲスこそ、一番の
曲者だと後で知ることになったからだった。
 2006/06/28 18:29  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

誤算だらけの交渉(2)
居合わせたお客様にご迷惑をおかけしたこと、
それに伴うお店のイメージ悪化、スタッフの精神
的ショック等々、事件の後遺症が甚大であること
は疑いようがない。

ただ、幸いなことに実損額としては、キャッシャー
とモデム、電卓1台の交換、それと床や壁のメン
テナンス費などにとどまり、さして大きな額にはな
らなかった。

事件後の対応によって、お店を半日休業しなけれ
ばならなかったこと、それに後遺症の対処療法費
を含めて、実費の4倍くらいが妥当と判断。そこを
目標に交渉に臨むことを決めた。

まず、内装業者さんに頼んで、フロアを新品同様に
し、壁を全部塗り替える見積もりを出してもらった。
さらに、事件翌日の定休日を営業日だったことにし、
1日半分の営業補償と奇跡的に助かったノートパソ
コンの弁償金を上乗せして、実損額の約15倍を損害
賠償請求として文書化し、示談の場へ出向く。

話し合いの場所は、当事者であるレストランの個室。
ドイツ人オーナー、インド系のゼネラルマネジャー、
フロアマネジャーのマノ。この3人に、サロンの経理
をお願いしている中国系のウォンさんと僕は2人で
対峙した。その他には、入居ビルのマネジメントから
担当者が2人出席している。

冒頭、マノが笑顔で飲み物をそれぞれのテーブルに
運ぶ。食事は何がいいか、これがお勧めだ、アレは
絶品だと全員に愛想を振りまく。

入居ビルの担当者が、メニューを指差そうとしたとこ
ろで、「ノーサンキュー。話が先だ」と口火を切り、立
ち往生するマノを席に戻した。

マノは当惑した顔で、GMに視線を移す。GMは、こ
ちらが準備した賠償請求の書類に目を落としたまま、
マノに圧力をかけているような様子だった。


 2006/06/28 14:20  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

誤算だらけの交渉(1)
サロンの天井にあるパイプが一部決壊し、汚水が床にドドッと
流れる。パニック状態のスタッフの1人に声を掛け、上の階の
レストランで水を使用しないようにと走らせた。

お客様への対応と床の清掃が一段落した後、自ら上のテナン
トへ出向き、責任者を呼んで現状を見せた。何がどう被害を受
けたかを一通り説明し、その後デジカメで証拠写真の撮影。

このとき、上から来た責任者、インド系のマノが「心配するな。
写真なんか撮らなくてもオレがこうして確認してる。メモもとっ
てる。この惨状はあまりにひどいから、オレがサロンの側に
たって、レストランのボスと交渉してやるから」

そんな言葉、真に受けるわけにはいかないから、シャッターを
押す手は当然止めない。でも、この状態で敵の中に味方がで
き、現状を共有してくれるってことは素直に少し嬉しい。

これが最初の誤算。1週間後の示談の席、結局はマノに振り
回され、話を前に進めることができなかった。
 2006/06/28 12:58  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

南国の笑う角(2)
さて、仕事の話に戻ります。

こちらの人は、とても簡単に携帯の番号を教えてくれます。
さらに、比較的どんな時間帯でも、仮に見知らぬ番号だとし
ても、まずは電話に出て話しをしてくれます。

会社に電話をして、担当者を呼び出してもらって、担当者が
自分の机から呼び出しに応答してくれるより、携帯で直接つ
かまえて、「やぁ、元気?」と切り出した方が、交渉に個人的
な感情の入る余地は多いと思われます。これが、冒頭に挙げ
た「一個人として対応してくれる」と感じるゆえんです。

そこで、はじめて会ったときに、つまり携帯の番号を聞き出す
ときに、笑顔を絶やさず、好印象を振りまくことが非常に大切
だと感じるわけです。

言葉は悪いですが、たとえ、ついでやおまけで名刺交換す
るとしても、相手にとって僕は外国人であるため、ある意味、
それは印象に残る機会にすることが可能なんです。

逆に、人一倍面子を気にする人たちなので、どんな場面でも
怒りの感情をあらわにしてしまうと最悪な結果に・・。まさに諸
刃の剣で、こうなると損得そっちのけで、その後のアプローチ
の入り口をすべて遮断されてしまうこともしばしばです。

ただ、時にはコワモテも必要な場合があります。

こちらの人は特に込み入った問題に直面すると、できるだけ責
任転嫁しようとする傾向にあるので、この担当者じゃ埒が明か
ないと踏んだら、わざとしつこく追いかけて、上司の携帯番号を
聞く方向に持っていけるからです。

実際、自分が電話攻勢から逃れるためだったら、上司の番号
すらいとも簡単に教えてくれます。経験値による判断に過ぎま
せんが、上場企業や公的機関も決して例外ではないと思いま
す。

以前にこんなことがありました。

店をオープンする際、電話局から番号の通知を受け、名刺や
広告、パンフレット等に電話番号を印刷したわけです。

ところが、いざ工事の人がお店にやってくると、この番号はこ
の地区に割り当てられたものではないと言い出します。

大慌てで、電話局のサービス係りに電話すると、「あなたの会
社の関係者が連絡をして、番号の変更を申請した」などと、とん
でもない切り返しをしてきました。

こりゃダメだ、と思い、「仮にもあなたの会社は上場企業であり、
番号の変更を受け付けるなら、正確な日時と担当者、および弊
社側の担当者名も記録しているはずだ。それを今すぐ伝えるか、
あるいは責任者の携帯番号を教えて欲しい」とゆさぶりをかけ
たんです。

そしたら即座に「この支局の局長は○○で、携帯番号はXXです」
ときました。案の定、局長の対応は迅速で、電話番号の下三桁を
1で統一した分かりやすい番号に変更してくれた上、6カ月間無料
で旧番号からの転送サービスをオファーしてくれました。

丁寧にお礼を述べ、あなたの対応は素晴らしいとほめちぎり、むこ
うが電話を切ろうとしたタイミングで、「ところで損害賠償の手続きは
どうしたら良いでしょう?」と尋ねると、オフィシャルレターを提出すれ
ば2〜3日中に回答すると、これまたお約束のその場しのぎ・・・。

予想通り、待てど暮らせど音沙汰なし。そこで、こっちは切り札の携
帯番号を頼りに、毎日電話。

電源オフも留守番メッセージもなんのその。

先方もいよいよ観念して、本社の人間といついつに出向くと搾り出す
ような声で確約してくれました。

約束の日に本人の姿はありませんでしたが、ちゃんと本社の人は来
てくれました。

笑顔で挨拶、がっちりと握手。携帯番号の交換も忘れず、民族のお祭
りの際にはお祝いのメッセージを送り、着かず離れず約半年。

電話代の支払いと相殺という形で、めでたく補償を獲得です。
結果的に1年以上も電話代がタダになったので、かなり助かりました。

でも金銭面以上に、交渉の術というか、的確な人物までたどりつき、
明るくアプローチし、携帯番号をゲット、あとは根気よく、のセオリーを
得たことが大きかったような気がします。

このブログのはじめに書いた、パイプ破裂事件の交渉でも、この教訓
が生きました。

次回はそのお話をば・・・

リカルド、ありがとう!
 2006/06/20 17:07  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

南国の笑う角(1)
誤解を恐れずに言えば、こちらの人は会社の利益を優先させる
という大前提はあるものの、ビジネスにも一個人として対応して
くれることが多いような気がします。

ワケのわからない書き出しになってしまいましたが、ここからもっ
とワケがわからなくなることが、この時点ですでに確定してしまい
ました・・・。もう脱出不可能、でも勢いはとまらない・・。

5〜6年前にリカルドというカナダ国籍のチリ人と知り合いになりま
した。ニコラス・ケイジに雰囲気の似たイケメンで、長身で、スポー
ツ万能で、かつ写真家で、それはもう、どこに行ってもモテモテで
した。

このリカルド。南米特有の明るさからか、いつでも、だれにでも、人
なつっこく、「やぁ元気?最近どう?」と話しかける。しかも、その姿
が様になっている。とにかくカッコイイ。

ということで、自分とリカルドの容姿の違いには目もくれず、ここ5年
くらい誰にあってもニコニコ挨拶、初対面でも笑顔で握手、を実践し
てきたわけです。

すみません。タイムアウトっす。続きはまた・・・
 
 2006/06/19 18:11  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

フォーチュンテラー
チャイニーズは風水とか占いとか、好きですよね〜。
青年社長もよく、今年はビジネス運がいいから投資
するとか、来年は控えるとか、真顔で言っております。

ということで、人生初。
おかまちゃんの占い師のところに行ってきました。

おかまちゃんの占い師に見てもらうのが初めてでは
なく、占い自体が初めてのこと。もともと冷やかしが
目的なので、カフェのつくりになっている占いの館で
ビールを飲み、リラックスというよりは、脱力ムードで
順番を待ちました。

肩に届く痛んだ髪を真っ赤に染めたおかまちゃんは、
おめめがぱっちり。酔っ払って目が赤い僕に、生年月
日をたずねると、使い古した本をパラパラとめくりなが
ら、わら半紙に鉛筆で殴り書きをはじめます。

一段落すると、あなたは常に現状に満足できない人で、
小さいときに愛情の面で寂しい経験をして、3〜4年前に
転機が訪れて云々かんぬん云々かんぬん。

いや〜、びっくり!
自分でも、ほんのり桜色の顔から血の気がひいていくの
がよく分かりました。

それからはまあ、タロットカードなどを使い、頭の中で言葉
がまとまると、おかまちゃんは目を半ば閉じ、貧乏ゆすりを
しながら、僕の方へ一気にまくしたててきます。終わるころ
には、参りましたって感じですね・・・。

その場を去るときには、完全に圧倒されていましたが、
よくよく考えたら、彼(彼女?)が指摘したのは、「こうい
う傾向にある」というところまでで、それ以降は僕自身が
思い当たる節をそこにくっつけて、ストーリー自体は、実
は自分の言葉で完結させてるわけですよね。

フォーチュン(fortune、運勢)のテラー(teller、語り手)
というよりは、心の奥底にある己の姿を表現してくれる
人ってところですかね。なかなか刺激的な体験は、ワン
ドリンク付で、1,200円ほど。まっ、お値打ちかな。

また、機会があれば行ってみます。
 2006/06/12 11:54  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

愛と神様
Love と God は同じルーツにあるような気がします
どちらも、とてつもなく大きく、かつ実態がなく、
ときに残酷で、これ以上ないくらいあたたかい

この週末は、なぜか寺山修司。ちょっとだけ真似て
みたい気分になって、ついやっちゃいました・・・
 2006/06/05 16:51  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

失礼なのは魂のせい?
中国人って、なんて失礼なんだ!!

って思ってたんですよネ。最初にシンガポールに
赴任したときだから、8年くらい前ですかね?

メインランドで生活したことはないので、正確には
華人系の人たちとでも言うんでしょうか。

「まぁ、よくもズケズケと。マナーってもんがあんだ
ろぉマナーがっ、オッ!」 などとよく思ったり、口に
したりしたもんです。

Damn rude!! What a hell is that, you bastard!
Where the f**k is your bloody manner, huh?!
誠にもって血気盛んでした・・・

ところがここのところ、ようやく心地よくつき合え
るようになったかなって気がしてます。

マナー。基本的にないわけじゃないんですよね。
ただ、ポイントや表現の仕方が違うだけ。

もちろん、失礼な人たちもおりますが、それはお国
柄の問題ではなく、個人の範疇。ヤなヤツは人種
を超えて存在します。

なんで最近、自分の中で距離が縮まったかという
と、自身を解き放つことができるようになったからな
んです。

大体において、あの人たちは行動も表現もとかくス
トレーです。ところが、こっちは遠慮が美徳。

「そうですか?そんなことはないですよ」と謙遜しな
がら、「オマエももう少し遠慮なり、わきまえるなりセ
ンカイ!」とだんだんハラワタが煮えくり返ってくる。

勝手に腹立てるくらいなら、遠慮なんかいらんのじゃ
ない?

そんな遠慮、そもそもあちら様ものぞんでおられるわ
けじゃないし・・。

そんで、僕もずけずけと。初めて会った人に「仕事何
してんの?」「そんでいくらもらってんの?」って、最初
はおそるおそるだけど、けっこーさらりと答えてくれる
んで、今は普通に・・。

相手が理解しないことに我慢して腹を立てるくらいな
ら、自らを開放せよ!

そんな大げさなことではなく、もともとズウズウしい僕は、
ただ単に、本来の姿を取り戻しただけなのかも知れませ
ん。

一時帰国前には、リハビリをしなければ・・・
 2006/06/02 13:46  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

プロフィール
石橋 正樹 (いしばし まさき)
マレーシア・クアラルンプールで事業を展開中。
スポーツライターを経て、ビジネス情報を専門に配信する通信社に勤務し、2001年よりクアラルンプールに赴任。
2004年に独立し、クアラルンプールにヘアサロン「月泉」をオープン。2006年に「E.P.」をオープン。Asian Hair Tokyo Style を展開中。

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