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そもそも、こちらに同情を寄せるフリをしながら、ロドリゲスが、 「ゴキブリ駆除で、以前に自分たちも大変な思いをした」と口 にしたのが、誤算だらけの交渉の警鐘だった。 今回の一件、あるいはウチのサロンとはまったく関係のない 話題ながら、自分たちも過去に苦労しただの、大変だったな どの話題を次々に挙げ、半ば「同じ境遇を経験した仲間じゃ ないか」とでも言いたげだ。 被害者と加害者との境界線をグレーにすることにより、自分 たちのペースで交渉を進め、こちらに妥協を図ろうとするつも りなのだろうか。いかんせん、分をわきまえない相手の態度 にカッカしどうしになる。 「水浸しになった床を修復するため、表面を削り、それからコ ーティングをやり直さなければならない」と主張すると、『自宅 を改装した際、床を削ったら木屑が舞って後処理が大変だっ た。だから、(削るのは)お勧めしない』などと、あたかも親切 心に基づいたアドバイスをしているような態度が、鼻につくほ どに馴れ馴れしい。 None of YOUR business! 顔を近づけ、人差し指をロドリゲスの額に向けて一喝した いところだが、交渉がこじれてしまっては相手の思うツボ。 実際、それから数週後、意外な場面で知ることになったの だが、この交渉でロドリゲスが意図していたのは、とにかく 難癖をつけて長期戦に持ち込むことであった。 |




