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出された飲み物のストローに口をつけるもの、賠償請求 のリストを指で追いかけるもの、腕組みをしたまま思案 にくれるもの。しばしの沈黙が広がる。 一番最初に口を開いたのは、やはりマノだった。 「オレは事件直後に自らサロンに行き、詳細に被害状況 を確認した。このリストに挙がっている備品は確かに水を かぶったが、水を除去した後、すべてが正常に機能する ことをチェックしたんだ。フロアも、きちんとモップがけをし て元の状態にもどったじゃないか!」 備品の機能チェックなんかしていない。フロアの清掃は、 管理ビル職員が善意で床の汚水を取り除いてくれたもの。 マノは清掃の場には立ち会っていないから、おそらく人伝 えに聞いたものと思われる。そもそも木の床だから、水気 を抜いたところで、修復完了とするわけになどいかない。 『チェックなどしてないじゃないか』と言えば、「オマエがい ないときにやった」と返ってくるのが目に見えているので、 『じゃ何? この正式な話し合いの場に、私がでっちあげの 賠償請求を持参したと言いたいわけですか?』とマノに視 線を向けた。 「そうは言ってない。事実と違う箇所があると指摘したまで」 『事実と違うということは、つまり、オレが嘘ついてるってこと と同じ意味じゃないか!』 そうやって立ち上がると、口ひげをたくわえたマノも立ち上が って応戦。ここで、ゼネラルマネジャーのロドリゲスが落ち着 いた口調で、「マノ、それは交渉の物言いではない」とボソリ。 次に、こちらを向きなおして「失礼な対応でした」と一見紳士的 に振舞った。一見と書いたのは、このロドリゲスこそ、一番の 曲者だと後で知ることになったからだった。 |




